Mr.Childrenの深海について語ってみる
今日はロックの日だそうだ。
なので自分の思い出の名盤を聴いてる人もいると思う。
そんな数ある名盤と言われる作品の中でも個人的に思い入れ深い1枚について
ちょっと駄文を書き連ねていこうかと。
ロックの日なので(大事な事なのでry
(本筋とはほぼ関係無いので読み飛ばしてもらっても構いません)
ヤバいガキだった。
特にいじめられていた事は無かった(と思う)が親しい友人もおらず
学校では完全に浮いていた。
放課後になればクラスメートが部活やら友達の家に行ったりするなか
ひとり真っ先に帰宅しておばあちゃんのとこに行って国語の本読みを聞かせていた。
小学校高学年のクリスマスに親にねだったのは当時ろくに見てない
アニメのロボットのおもちゃだった。
音楽はと言えば、当時流行りのチャゲアスとかTVで流れるものを何となく聴いて
あとは嘉門達夫にドハマりして学校で歌いまくってその頃少し出来た友達に
うざがられていた。
そんなヤバい少年時代を過ごしていた自分が初めてミスチルを聴いたのはTVだった。
アクエリアスのCMで頻繁に耳にした「innocent world」の清涼感あるメロディーが
気になったように思う。
やがて彼らがブレイクして歌番組でもよく見かけるようになった。
だんだん興味が出てきて最初にちゃんと聴いたのは「【es】」のシングル。
雨のち晴れはc/wに収録のRemix版を先に聴いたこともあって今でもこっちのバージョンのが好きだ。
そして今から21年前の1996年。月9で新曲が起用されると聴いて
そのドラマも見ることにした*1
実は「名もなき詩」は当初はあまりピンと来てなかったのだけど
ドラマで何度も聴いてるうちに良い曲だなーと感じてきた。今はとても好きな曲だ。
程なくして新しいアルバムが出ることを知る。そして6月24日それは世に出た。
なんとなく買ってみようか位の気持ちで発売直後に買うことになった。
帰宅してさっそく当時オーディオ好きだった親父の良い環境*2で再生した。一気に引きずり込まれた。
あの時半日くらいは、CDの再生が終わればまたリピートして最初から聴く
ということをずっとやっていたのを今でもハッキリ覚えている。
まったく飽きなかった。今まで自分が聴いていたものは何だったんだろうか。
とにかく衝撃だった。
以降、過去のアルバムを辿っていきながら自然と洋楽なんかも聴きはじめ
TVでは流れない類いのものにも手を出すようになっていった。
気付けばロボットもレゴブロックもガンプラも殆んど興味が無くなっていた。
あの時このアルバムを聴いていなければその後どうなっていただろうか。
今より危ないおっさんになっていたような気がする。
それ位人生に強い影響を受けた作品である。
(駄文ここまで)
では長い前振りになったけど、ここから「深海」の内容について掘り下げていこうと思う。
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日本のロック名盤「深海」について
聴いてる人は既に知ってることだけど、このアルバムは曲間がほぼ無い。
シームレスに1曲目から2曲目。2曲目から3曲目・・・とつながって
そのまま最後のタイトル曲までつづいて行く。
これもループしてしまう、中毒性の強い作品である理由の一つだろう。
それと前年にかけて大ヒットしたシングル4枚*3の
いずれも収録されなかった事は大きな話題だったようだ。
当時のロキノンでも「業界内でテープが回るとこれは売れないんじゃないか」と書いてあった。*4
結果的に重厚感のある暗い陰鬱な作風に統一され、コンセプトアルバムとしての
完成度も上がりまるで14曲で1曲の組曲のような構成になっている。
-
アルバム全曲解説
Dive
波のようなSEから弦とシンセサイザーの音が絡まっていくインスト。
深く沈み込むように次の曲へと繋がる。
参考にしたというピンクフロイドで言うと「狂気」の「Breath-SpeakToMe」といったところか。
シーラカンス
枯れたギター。枯れたような歌詞(シーラカンスに自らの心情を重ねるとこなど)
例えば同じ実質的な1曲目でありながら前作の「Dance Dance Dance」にあった
ライブで盛り上がるようなポップでカラフルな雰囲気はここには無い。
それまで「キャッチーなJ-POPバンド」くらいの認識しか無かった人は
ほんとに驚いたに違いない。完全にロックバンドの音だ。
派手さは無いけどめちゃくちゃカッコ良い曲。
手紙
タイトル通り別れた彼女への手紙のような歌。淡々とした曲だけど
内容はそのまま次曲の後日談になるのでこれも外せない1曲。
ありふれたLove Story~男女問題はいつも面倒だ~
これもタイトルそのまま。上京した若者が合コンか何かで付き合い出し
同棲してしばらくは幸せだったもののやがてすれ違い別れることになる。
僕はここまで特別なこともおよそ歌詞になりそうにないことを歌いながら
印象的なラブソングになった曲を知らない。
普通は歌にするにあたって多少は盛るし、でなければ聴けたものじゃないのがオチだ。
「雨のち晴れ」にしてもそうだけど、こういうストーリー性のある歌詞を書くのが
桜井は抜群に上手い。
特にこの頃は公私共に追い込まれながらギリギリの精神状態で吐き出された
言葉の一つ一つの説得力がずば抜けている。
Mirror
最初だけ聞くと如何にも「ありふれて使い古した言葉を並べ」たラブソングという印象。
しかし曲の肝はやはり終盤の部分だろう。
夢や希望や愛が全部嘘に見えてしまったら、自分が鏡となってあなたを映し続ける。
これは正に当時の桜井がそういうもの全て嘘っぱちに感じて自分を見失いそうになっていたのだろう。
さわやかなメロディーではあるけど、その実これは自らへの救済でありSOSでもあったと思う。
Making Songs
曲のデモを数曲つないだSE的トラック。最後に弾き語りの「名もなき詩」が
流れたあとそのまま次へ繋がる。
イエモンのBURNや電気グルーヴのShangri-laのようにヒット曲をアルバムの中で
印象的に聴かせる役割という感じか。
Mr.Children「名もなき詩」Mr.Children "HOME" TOUR 2007 ~in the field~
96年日本で一番売れたシングル。シンプルながら印象的なイントロ。
Aメロ→Bメロと徐々に盛り上げてサビで爆発させる。
小林武史のアレンジは完璧と言って良いと思う。
歌詞もメロディーもほんとに良く出来ている。
余談ながら、デモ版を昔聴いたことがあるのだけど
楽曲自体はほぼ変わってないものの更にフォーク調の印象で
悪くないものの、あのまま出たら売上半分くらいだったんじゃ・・・と思わされた。
アレンジの大切さを知った曲。
So Let′s Get Truth
長渕リスペクトのプロテスト?フォーク。
社会風刺を書きながらアコギを掻き鳴らしハーモニカを吹き鳴らす。
非常に短いながら強いインパクトをもつ1曲でアルバムの中でも特に好きな曲。
臨時ニュース
次曲への前振りSE アナログテレビのガチャガチャ言う音にアナウンサーの声や
「また会えるかな」などが流れそのまま次へ
マシンガンをぶっ放せ
イントロ無しで一行目から前年にフランスが強行した核実験を痛烈に批判する1曲。
一つ前の曲が青年のぼやきのような歌詞だったのに対して
こちらは完全に全編に渡って社会への批判を繰り返していく。
勢いある曲の途中でどさくさのように出てくる「コンドームをくれ」が割とツボ。
ゆりかごのある丘から
後から知ったことだけどメジャーデビュー以前の曲らしい。
言われて見れば確かに曲調も優しいフォーク調だし、歌詞の女々しさも初期ぽい。
9分近くある長尺ナンバー。あとこれも最後次とつながるのだけど、
本作でここの繋ぎ方が一番カッコいいと思う。
虜
前の曲の最後、JENの激しいドラムからそのまま繋がるハードロックナンバー。
Wikiにもあるように歌詞は殆んど日本語なのに英語のように聞こえる1曲。
サビにあたる部分がゴスペル調で本場のゴスペルシンガーが担当している。
1曲の中で何度も展開が変わる不思議な曲である。
花-Memento Mori-
花 -Mémento-Mori- / Mr.Children
そもそも女性シンガーに歌ってもらいたくて作ったというのは
前からファンの間では有名だ。
以前にaikoがラジオでカバーしたこともあった。
アコギと歌から徐々にバンドの音が入るシンプルながらもしみじみとする良い曲。
サビの「負けないように枯れないように笑って咲く花になろう」
こういう歌詞をまた歌えるようになったのは時間がかかったというようなことを
「優しい歌」あたりの雑誌で桜井が言っていたような気がする。
メメント・モリ(死を想えの意味)という言葉をこれで知った人も多いんじゃないだろうか。
深海
再び歌詞に「シーラカンス」が出てくるタイトルナンバー。
自分が可愛くて樹海を彷徨い死ぬことにも憧れを抱く主人公は当然桜井だろう。
そんな自分を連れていって(連れ戻して)くれと終盤は叫ぶように歌い
最後は再び水のSEが出てきてまた最初に戻るような流れになっているのも上手い。
- 総括
今回これを書くにあたって久々に聴いたのだけど、やはりこのアルバムは異質だ。
ミスチルの他のアルバムに1曲はある派手な曲やドームやホールクラスで 会場全体が
一体になって盛り上がるような曲は(名もなき詩など除けば) ほぼゼロと言って良い。
歌詞は後ろ向きだしとにかく暗い。
当時ミスチル人気は凄まじいものがあり、シングルを出せばミリオンかダブルミリオン。
桜井はキムタクやオザケンと並んでアイドル的人気も獲得していた。
殺人的なスケジュールで疲弊した桜井は当時家族がある身でありながら
不倫に溺れ(現在の奥さん)バンドの状態としてはぐちゃぐちゃだったはずだ。
そんな中ニューヨークで録音された本作は、当時の桜井の状況や
コバタケの天才的なプロデュースワークなど様々な要因が奇跡的に融合した傑作だ。
翌年深海に未収録のシングル4枚を含めた「BOLERO」は本作と合わせ鏡というか
2枚で一つのような性格もある。*5
しかし今作はそれ1枚でしっかりと成立した作品である。
今まで何となくしかミスチルを知らない人や聞かず嫌いの人こそ是非聴いて欲しい。
おそらく最初は良くも悪くもショックを受けるだろう。
そこから彼らのポップだけではないロックな魅力も感じてもらえれば幸いである。
- アーティスト: Mr.Children,桜井和寿,小林武史
- 出版社/メーカー: トイズファクトリー
- 発売日: 1996/06/24
- メディア: CD
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